河鍋暁斎 ―躍動する絵本
元々いこうと思っていた先があったが、今日で前期展示が終了とわかったので、急遽予定を変更、太田記念美術館の河鍋暁斎展にいくことにした。
行った。
河鍋暁斎 ―躍動する絵本
私は河鍋暁斎が好きで、以前サントリー美術館で開催された企画展にも行って、その時に買った図録を今でもたまに眺めている。
今回は彼の書いた絵本に焦点を当てた展覧会なので、はじめましての作品が多かった。
【開催概要】
幕末から明治にかけて、狩野派でありながら浮世絵も数多く描いた絵師、河鍋暁斎(かわなべ・きょうさい 1831~1889)。(略)
暁斎の絵を一冊の本にまとめて出版した「絵本」というジャンルは、これまでほとんど注目されてきませんでした。本展では、人物や動物、妖怪などを躍動感あふれる筆づかいで描いた暁斎の絵本を大量に展示することで、「画鬼」と称された暁斎の知られざる神髄に迫ります。
【開催期間】
2021年10月29日(金)~12月19日(日)
前期 :10月29日(金)~11月23日(火・祝)
後期 :11月27日(土)~12月19日(日)出典:
彼の絵がなぜ好きかといえば、なんとなくだがこの人は絵が本当に好きで、描いてるのが楽しくて仕方ないんだろうな、ということが伝わってくるように感じるからである。
なんでもそうだけど、楽しんでいる人の作品とか表現は楽しいのだ。
何より彼の絵はどこかユーモラスで、鬼や閻魔や動物、七福神のような神様を描いてもなんとなく間が抜けたところがあり、可愛らしくすらある。
今回は絵本ということで、かなりラフなものもあるだろうか、などと思いつつ。
個人的見どころ
この企画展では3つのテーマに区切って紹介されている。
画題は風俗から動物、風景から妖怪まで非常に幅広い。
この時代の絵本というのは、ストーリー仕立ての子供向け図書といったものではなく、単発的なイラストを集めたようなもののことを言うらしい。
それこそ有名なものは北斎漫画だが、あれもさまざまなイラストが描かれており、初心者にとっては手本帳でもあったそうだ。
ちなみに北斎と言えばその画力の高さも有名だが、この暁斎も画鬼と自ら称するほどに、べらぼうに美味かった。
こちらは骸骨の絵だが、めちゃくちゃ精緻な一方で思う様に踊ったり変なポーズを取っていたりと、真面目なんだがふざけているのかと言った感じだ。
本当は2つで1つの作品のようだが、これだけでも十分要諦は伝わるだろう。
この人はちょいちょい骸骨を描いているが、そのほとんどは遊んでいる。
組体操だろうか。
面白い。
またいかにも画家の頭の中をすかしてみるようなこんな作品も。
こちらは実線を黒で描きつつ、朱色で衣服を描いており、私のような素人には非常に興味深い作品だ。
考えてみれば当たり前かもしれないが、衣服の向こうがあの骨格が明確だからちゃんと人にみえるし動きにも躍動感がでるのだろう。
こういう形であえて描いて見せるのが面白いところだ。
こちらはもののけを描いているが、不気味さもありながらどこかおどけたモノノ怪の顔が可愛らしい。
この人の描くもののけは概ねこういったものが多く、また鬼や地獄の閻魔でさえもそうである。
ちなみに、暁斎はある知人で体が不自由になり働き口に困ったものに絵をプレゼントし、その絵を使ってその人は商売をすることができたので暮らしが助かった、なんて話もあるらしい。
他方で自宅が火事になったにも関わらず、その燃え盛る様を熱心に観察して家財道具も運び出さなかったので家人に怒られた、といったエピソードも残っており、いずれにせよかなりの変わり者だったことが想像に難くない。
しかし、そこまでして絵を描き続けるような人の描く作品が面白くないわけがなく、みていてついフフフとなってしまう。
河鍋暁斎と音楽と
そんな暁斎と音楽を考えるとなにがハマるだろうかと考えると、こちらなどいかがであろうか。
日本のロックを聞く人であれば知らない人はいないであろう、向井秀徳率いるZazen Boysである。
最近復活してすっかりアクティブなNunber Girlよりも、こちらの方がより向かいも遊んでいる感じがしてよいのではないだろうか。
楽曲そのものは非常にタイトでめちゃくちゃかっこいいのだけど、ライブではしばしば遊び散らかしている。
向井の気まぐれとしか思えないような音あてみたいなこととかよくやっている。
彼の言葉も独特だが、それ以上に音と戯れるのが好きなんだろうんだと思う。
今更ながら、若い人にもチェックしてほしい存在だ。
まとめ
先にも書いたが、楽しんでいる人を見るのは楽しい。
まして凄まじいテクニックを持っている人は、そこに驚きや感動ものっけてきやがる。
好きこそ物の上手なれ、とはよくいうが、好きすぎる人は世間的にはえてしてただの変態である。
でも、変態でいいじゃないか。
そんな変態達の発露を楽しく見るのが、凡人としてのせめてもの嗜みである。
後期にもまた行ってみよう。