インド細密画 ー実は馴染みのある芸術作品
現在有給も消化しているので、3連休と抱き合わせて5連休にした。
最近の趣味である自転車を乗ることをやってみようと思い、ちょっと遠出している。
府中美術館は日本美術を中心に、企画色豊かな展示をしているのでちょくちょく行くのだけど、普段は自宅から1時間半くらいかけていくのだけど、今回は自転車で行くことに。
途中少し寄り道したり市街地で軽く迷子になったりしたので余計な時間は少しくってしまったものの、おそらく正味で2時間かからないくらいで行ける距離である。
電車だと乗り継ぎの都合もあるので、直線距離にすれば存外遠くもないし、自転車ならスイスイ行けるのでこんなものなんだな、なんて思ってみたり。
この頃の多くの発見は、そうした思ったより近いんだなという感覚である。
そんな府中美術館で開催中なのが、なんとインドの美術。
考えてみれば見たことないし、でも仏教画なんかは日本美術の一つの柱にもなっているわけで、観ていて思ったのは思った以上に日本のそうした美術と地続きというか、親和性があるように感じたことだった。
インド細密画
完全に飛び込みで行ってみたんだけど、思ったよりずっと面白かった。
同時に、日本画と同じく遠近感よりももっと直感的に絵画的な表現に重きが置かれている印象で、むしろ絵画的な姿勢を持った絵画なんだなと。
【開催概要】
インド細密画は、16世紀後半から19世紀半ばに、ムガル帝国やラージプト諸国の宮廷で楽しまれものです。(中略)小さな画面に描かれたのは、「見る人と絵が一対一で対話をする」という考え方があったからです。(中略)
美しい線と色に彩られた宝石のような絵の中には、豊かな大地から生まれた人々の自然を崇める心や感性、情熱的な信仰心が込められています。
(中略)西洋絵画とも日本絵画とも違う、インド細密画の美の世界をお楽しみいただき、インド文化への興味を深めるきっかけともなれば幸いです。【開催期間】
2023年9月16日(土)– 11月26日(日)
参考:
細密画と言われるだけあって、ごく小さな紙面に描かれているものが多く、近くでじっと目を凝らすような作品だった。
そのくせめちゃくちゃ細かいのだけど、いずれの作品も作者のクレジットがないのである。
自分の描きたい世界を描くという近代絵画的な価値観とは相反するエゴのない世界は、その根っこに強い宗教性があるが故なのかもしれない。
みるものとの対話を、なんて説明がされていたけど、個人的にはそんな気がしたが。
個人的見どころ
モチーフになっているのが神話的なものが多く、「ラーマーヤナ」など、皆川亮二の漫画でなんか読んだことあるぞ、というような名前が多く出てきた。
今回の展示で特によく出てきた登場人物が何人かいるが、そのうちの一人がクリシュナ、インドの神でありながら英雄的な存在として親しまれているらしいが、『アダマス』でみたことあるな・・・。
調べると結構たくさんの絵が出てくるが、青い肌が特徴的に描かれている。
この絵だとちょっとわかりづらいが、真ん中あたりの王冠を被ったのがクリシュナだ。
神としての神々しさと人間的な生活感をどちらも描かれており、人々にとっての神との距離みたいなものを感じるところだ。
インドの主流はヒンドゥー教なのだけど、昔学校の歴史の授業で聞いたっきり大して覚えていないが、ともあれその神話的なモチーフで描かれる絵画は、しかし欧州におけるそれよりもどこか身近というか、それこそ日本でいう昔話のような感じも覚えた。
実際例えば桃太郎は、「ラーマーヤナ」という話が元になったそうだ。
興味のある人は調べてみてね。
またこちらも有名なキャラクタだ。
こちらは先の「ラーマーヤナ」に出てくる猿王ハヌマーンというキャラクタだが、あの孫悟空のモデルだそうだ。
「西遊記」は中国の物語だが、三蔵法師のインドへの旅路を描いており、何かのヒントになったことは確かそうだ。
ちなみに西遊記の主人公玄奘は実在した人物らしいが、やばいレベルの天才だったらしい。
インド美術や文化は、日本を含むアジア圏には多大な影響を残しているようだ。
それはともかく、インド絵画の大きな価値観の一つが、音楽を絵に収めるというものらしい。
「ラーガマーラ」というようだが、音楽自体が暮らしの中に溶け込んでおり、朝聴くラーガ(曲)、夜のラーガなどさまざまあり、それぞれ性価値の一場面を描きながら、これは朝のそれだよ、みたいなのがあるらしい。
アサヴァリは、朝に演奏される楽曲らしいが、椅子に座りながら笛を吹いているが、そこに蛇が寄ってきている。
こちらは非常に落ち着いた印象の絵だが、他にも同じモチーフながらもっと華やかというか賑やかに描かれたものもあり、こうしたところに画家の作家性が現れていたんだと思うが、いずれもクレジットがないからわからない。
なんか勿体無いと思ってしまう私は蛾が強いのかもしれない。
ちなみに、夜に口笛を吹くと蛇が出るという日本の信仰もあるが、ひょっとしてこういうところが出典だったりするのだろうか。
いずれにせよ音楽を絵画として表現するというのは他国にない独自性で、最近でもインド映画が偉い大ヒットしていたが、ミュージカルどころじゃないレベルで歌って踊るのがその特徴と言われるが、それは昔からのこうした文化が根っこにあるのかもしれないね。
同じタイトルの絵も多くて、正直個別のあれこれをうまく引っ張って来れなかったんだけど、思った以上に親しみのあるモチーフやタイトルがあって、飛び込みで見に行ったんだけど面白かった。
インドでの仏教徒は10%もいないらしく、完全にヒンドゥー教の国なので、宗教的には個人的に馴染みのないものだ。
しかし、元を正せばバラモン教があって、そこから派生してきているので似たところもあるし、先の孫悟空、桃太郎だけでなく、神の乗り物として空を飛ぶガルーダという怪鳥も、名前はロープレで見たことあるし、その姿から天狗の原型とも言われている。
そんなものがたくさんあって、そういう発見感も面白かった。
ただ、もっと素朴に絵画としてみれば、作品が小さいのもあるが一つ一つの描写がまあ細かい。
1700年代の絵画も多く展示されていたが、どうやって書いたんだろうって不思議なくらい。
ちなみに、当時インドは絵の具の産地でもあったらしく、そのせいもあってか色彩も豊か、写実性よりも色彩表現によっていたり、平面的な画面だったりは日本の浮世絵にも通じるところがあり、実は美術観に近いものを持っているのかもしれない。
インド美術と音楽と
そんなインド美術と音楽だか、ちょっと変化球で難しいが、こんなのはどうだろうか。
音楽の哲人Frank Zappaなどどうだろうか。
語れるほど詳しくもなければ聞き込んでもいないが、それでもなおその存在感は認知している。
彼の音楽自体かなり歌詞が卑猥なこともあり当時物議を醸し、裁判にまで発展したそうだが、その様子をレコードに収めるというかなりパンクな活動もしている。
そもそも作品数がべらぼうに多く、1年で2枚ペースでアルバムをリリースしていたこともあるので、作品数は50をはるかに超えるので、その全貌を掴めるのはもはやマニアの領域だ。
他方で、彼のバンドからは多くの名プレイヤーが輩出されていることでも話題で、私的にはKing CrimsomやNINにも参加しているエイドリアン・ブリューはどうしても目をひく存在だ。
また、日本のパンクバンドの先駆け、頭脳警察のバンド名は彼の曲”Brain Police”から拝借されるなど、さまざまなところに波及している。
音楽的には凄まじくテクニカルなところもありつつ、アバンギャルドだがポップさもあり、なんとも不思議な音楽だ。
そんな摩訶不思議さと全世界的な密かな影響度など、そんな面から彼などどうだろうか。
まとめ
なんだかんだ見ているのは西洋圏と日本、せいぜい中国当たり前の美術で、他の国のものはあまりわからないのが実際だ。
なんならアメリカでされ、アンディー・ウォーホールを始めとしたポップアートくらいしかちゃんと認知していないからな。
まだまだ勉強不足だ。
そもそも知る機会自体が希少なので、こうして紹介してくれる機会は貴重だ。
明日はモネ展へ行くが、それはそれでいいんだけどこういう人気の確定している画家ばかりを集めるのではなく、認知の低いながらに思いがけない発見や驚きを与えてくれるような美術館ほど、もっと世に知られて欲しいよね。