STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示
この展覧会は先週言ったんだけど、文章を途中まで(約2,000字)書いたところで誤って別ページへ飛んで全て消えてしまったので、意気消沈した次第である。
イヤほんと、デジタルって奴は便利だけど残酷だよね。
もっとも、考えて見ればこのPCが既に6年以上経過しており経過しており、OSも 更新できないくらいスペックが遅れている。
不要なアプリとかデータは削除して、できるだけ外付でデータも保存しているが、文字の変換にも時間がかかるしネットの接続も極めて悪いため、作業効率は爆裂に悪い。
とはいえ、そこまで何かやるわけでもないし、動き出しが悪いだけである程度の時間を使っていると徐々に動きも良くなってくるので、とりあえず使っている。
でも、そろそろ潮時か。
それはともかく、行ってきたのはアーティゾン美術館の新収蔵品展だ。
印象派から抽象画を多くコレクションしており、また海外も国内もどちらもあるため、その辺りを見るには非常にいい感じだ。
また施設自体も2019年だったかにリニューアルオープンしたばかりでとても綺麗、都心のビル群の中にあるが、中は静かで丸っと見て回って1時間くらい。
やっぱりこれくらいのボリュームがちょうどいいですね。
STEPS AHEAD: Recent Acquisitions
今回はここ数年で新たにコレクションに加わったものを紹介しつつ、これまでの収蔵作品と合わせて文脈を整理することで、美術史的な観点でも見えてくるのがこうしたコレクション展の面白いところだろう。
【概要】
近年、石橋財団は印象派や日本近代洋画など、従来の核となるコレクションを充実させる一方で、抽象表現を中心とする 20 世紀初頭から現代までの美術、日本の近世美術など、コレクションの幅を広げています。(中略)キュビスムの画家たち、アンリ・マティスのドローイング、マルセル・デュシャン、抽象表現主義の女性画家たち、瀧口修造と実験工房、オーストラリアの現代絵画など、(中略)さらに前進を続けるアーティゾン美術館の今をお見せします。
【開催期間】
2021年2月13日[土] - 9月5日[日]
参考:
私は最近ようやくいろんな絵を楽しめるようになってきたんだけど、やっぱり抽象画はどうみていいかよくわからない。
小学生や中学生の時には、美術の授業で絵画もあったわけだが、いわゆる風景画、写生会みたいな時にはそこそこの絵をかけていたので良く褒められていた。
しかし、抽象画をかけと言われるとどうしていいかわからなかった。
それははっきりと覚えている。
当時の先生に、思いのまま描いてみろ!とかカッコよさげに言われたけど、今にして思えばあの先生方もよく分かっていなかったんじゃないだろうか。
以前にバウハウス展もみに行ったんだけど、そこでの授業風景なども紹介されており、その時の解説で一端についてはちょっと分かったんですよね。
それ以来その視点で見ることはやってみるわけだけど、また別の背景にはある種の哲学的な視点などもあって、なるほどと思う一方で、そんなものわかるか!と思わず突っ込みたくもなるが、だからこそこういう文脈の中で語ると面白くなる。
印象派もそういう側面はあったと思うけど、絵面的な綺麗さやわかりやすさがあるから人気も出るんだろうけど、そうでないとなかなか理解できないよね。
直感的にそれを感じ取れる感性がある人は羨ましいね。
個人的見所
展覧会の冒頭は日本の西洋画家の絵から始まる。
黒田清輝とかが代表的な人だけど、今回は藤島武二さんという人の絵が中心にあるようだ。
こちらは今回大きく展示されている絵の一つだが、こちらのモデルは中国の人らしいですね。
そこはかとなく色使いなどにそれを感じるようにも思うが、ともあれ東洋の絵で美しい横顔の絵がないのでは?と言ってこうしたモチーフを選んだそうな。
日本で西洋画が徐々に増えてきた頃の画家さんだが、既に本国に劣らない画力を持っている。
とはいえ、同時代の日本画もいい作品はたくさんあり、むしろ徐々に双方の影響を受けたミクスチャーな作品も出てくるので、面白い時代だったんだろう。
それ以降はキュビズムの作品から抽象絵画に入り、インスタレーションはじめ現代アートなども登場してくる。
こちらはカンディンスキーの作品だが、まだ抽象絵画に行く手前の印象派的な雰囲気の残る作品である。
現代絵画の父と呼ばれるセザンヌが、「自然を円筒と円錐と球体で捉えよ」といった発言をしたことで、それがキュビズムを確立するブラック、ピカソに多大な示唆を与えて、またバウハウスの授業でも目の前のものをできるだけシンプルな図形に分解せよ、といった授業もあったそうだ。
こちらは私は知らない画家さんだったが、キュビズムの人らしい。
キュビズムと言えば、ピカソの作品のように子供の落書きなんて言われることもあるけど、その背景を知ってから見るとなるほどなと思えるから面白い。
それこそかつては写真のような精緻な作風が西洋画の大きな特徴だったが、印象派においてはより網膜に移る光や色彩の鮮やかさをどう描くかといった表現にシフトしていった。
また描く対象も、宗教的なモチーフや似顔絵だけでなく、風景画も増えて、かつての絵画的な価値も変わったということらしい。
そこからさらに「絵画とは何ぞ?」といったある種哲学的な問いも発生し、キュビズムや抽象絵画のような作品もどんどん生まれてきたのだろう。
遠近法を使った立体的な表現が主流な中で、二次元でそれを表現したらどうなるかみたいな話がキュビズムの基本発想というから、なぜそんなことを考えたのか、またそれをああいう形で表現したのはすごいよね。
そこからさらに対象を切り刻んで、再構築していく中でさらに独自の作風に転じていくのだけど、この人の頃には既に一定ジャンルとして確立していたんだろうかね。
また抽象画においては、こんな作品も。
文字のようにも見えるし、中央のものは鳥とかトンボにも見える。
タイトルを「絵画」とつけるあたりある種のメタ表現なのかもしれないが、やっぱりパッとみてもわからないよね。
でも、だからあえてこれなんだろう?と立ち止まって考えてみるのも芸術作品の面白みだろう。
人はわからないものに拒絶反応に近いものをよく見せるし、なんなら否定する場合もある。
そんなことはしても何の意味もないし、意味がわからないなら意味がわからないものとして受け入れて、せめてこれってなんだろうかと考えてみる姿勢はとても大事だと思っている。
私は音楽も好きだけど、ようわからんと思いながら聞いているものも少なからずある。
あちこちの専門誌で評価されていても、わからないものはわからないし、でもそれは無価値なわけではないし、また専門誌が扱わないから無価値かといえばそういうわけでもない。
それはそれ、これはこれ、とりあえず何でも一度考えてみることが意味あると思っている。
そのほかにも彫刻や立体作品も多数あり、撮影も可能らしい。
作品の前でポーズして撮っている若い女の子たちがいたが、はっきり言って邪魔だった。
そういうのはどうかと思うが、ともあれまとまってみられるいい機会である。
Step Aheadと音楽と
抽象絵画の訳わからなさを表すには、この音楽だろう。
ニューヨークのアヴァンギャルド集団、Black Diceの"Pigs"。
初期にはBoredomsに影響を受けたトランシーな音楽をやっていたが、徐々にノイズ性とカオス性を増して、なのに独特なポップさも得た摩訶不思議な音楽をやっている。
一応ヴォーカルらしきもあるが、歌というよりは呻き声だ。
J-POPしか聞かないような人にはもはやなんなんのかわからないだろうが、私も正直に白状すれば、よくわからない。
しかし、そのよくわからなさが楽しくなってしまって、気がつけば全アルバムを持っている。
つい先日久しぶりに曲を発表しているので、またアルバムとしてまとまった作品として聴けるのを楽しみにしている。
まとめ
個人的な価値観にはなるけど、わからないものをわからないものとして面白がれるようになると、少なくともストレスは減る。
それって、知らないこと、わからないことを恥に思うことがなくなるし、いい意味で開き直ることになるから、素直に人に教えにも耳を傾けるし、自分で勉強するようにもなると幅も広がる。
別に絵画とか音楽に限らず、仕事でもなんでもそうである。
馬鹿でかい、視界いっぱいの意味不明はそれはそれで感動体験なので、時間のある方は是非足を運んでみて欲しいですね。