美術館巡りと音楽と

主に東京近辺の美術館、企画展巡りの徒然を。できればそこに添える音楽を。

風景画のはじまり コローから印象派へ

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三連休てのは素敵だな、と思っっていた先々週。

 

オリンピック開催中、コロナ絶賛流行中、灼熱の夏場進行中、そして台風接近中と騒がしいのは夏らしくて良いのか。

 

私は世相もどこ吹く風にマイペースに過ごしている。

 

夜は楽しみにしている配信があったものの、他方で方々の企画展は見ておきたい。

 

そんなわけで早めに起きて準備して、今日はSOMPO美術館の『風景画のはじまり』へ。

 

この美術館、少し前にリニューアルしたばかりだが、その前からちょくちょく足を運んでいた。

 

ゴッホのひまわりを所蔵していることでも有名だが、企画展のセンスがいい。

 

超有名のちょっと手前の、コアながら確かな作品を紹介してくれている。

 

割と印象派前夜の風景画家を扱っている印象だ。

 

それこそターナーとかドービニーの企画展にもあったし、今回はコローを中心に上記2名に加え、ブーダンの作品も。

 

そして印象派の画家の作品も展示されており、まさに印象派前夜の作品を集めたような企画展だ。

 

所蔵しているのは海外の美術館だが、改修中とあって作品を貸し出してくれているらしい。

 

最近は国内の作家の企画展が多い中なので、海外の作家の企画展は稀有になる中でありがたいことだ。

 

※途中まで書いて置いておいたので、冒頭の挨拶のリアルタイム感のなさよ・・・

 

風景画のはじまり コローから印象派

 私は絵のジャンルでいえば風景画が一番好きである。

 

元々田舎の出で、こうしたお盆休みなんかでは親の実家に遊びに行っていたんだけど、そこは山の中。

 

今は 河岸工事もしてしまったのでどうかわからないが、私が子供の頃、ほんの25年くらい前は普通に飲んでも平気なくらい綺麗な水の流れる川があって、鮎やうなぎ、虹鱒なんかが普通に泳いでいた。

 

親戚も田んぼで米作りもしていたので、よく手伝っては小遣いをもらっていた。

 

そんな山川の風景が私にとっての原風景でもあったので、ちょうど風景画の描き出す世界がそんな風景と合致するような思いがあって、その中に入り込むような空想にふけるのが好きなんだよな。

 

【開催概要】

コローやクールベバルビゾン派から印象派まで、フランスの近代風景画をたどる展覧会です。(中略)本展では、このランス美術館のコレクションから選りすぐりの名品を通じ、印象派でひとつの頂点に達するフランス近代風景画の展開をたどります。

19世紀初頭に成立した「風景画」は、フランス革命産業革命を経て近代化をむかえたフランスにおいて、鉄道網の発達、チューブ式絵具の発明、また新興ブルジョワジーの台頭などを背景に、さらなる展開をとげました。(中略)ミシャロン、ベルタン、コロー、クールベバルビゾン派ブーダン、そしてルノワール、モネ、ピサロら19世紀の巨匠たちによる風景画の歴史を展観します。

【開催期間】

2021.06.25(金)- 09.12(日)

出典:

【ランス美術館コレクション 風景画のはじまり】 | SOMPO美術館

 

 私がちゃんと絵画を見るようになったきっかけは見た目にも華やかで切れない印象派の諸作だった訳だが、その前夜というわけで、やっぱり見ておきたいですよね。

 

個人的見どころ

日本でも人気の印象派絵画、その先駆け、ムーヴメントのきっかけとなった作家の作品を時間軸にそって紹介されている。

 

タイトルにもあるように、戸外での制作が徐々に一般化していくなかで、モチーフに風景 が選ばれるようになるようだ。

 

絵のモチーフにも各みたいなものがあって、上位はやはり宗教モチーフのもので、対して風景画は下の方、という序列であったらしい。

 

実際昔の絵画は宗教か人物か戦争か、みたいな感じで、あんまり風景画って少ない。

 

それこそブリューゲルなどは風景というより風俗と言えるかもしれないが、よく見る作家だとそれくらいで、あとはあくまで背景として描かれているくらいだろう。

 

 そんな中で風景がよく描かれるようになった背景は、絵具の携行性が向上したことによる戸外制作の幅が広がったことで、手近にあった風景が選ばれたのだろう。

 

 時間や季節によって常に違う表情なのも、画家にとっては面白かったのかもね。

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カミーユ・コロー「湖畔の木々の下のふたりの姉妹」

印象派初期、走りと言われる作家の代表格の一人がカミーユ・コローという人で、この人の絵は昔からしばしば観たことがあった。

 

素朴な印象ながら光と影のコントラストも鮮明で、木の間から見える景色の抜けの良さというか、広がりかたがみていて気持ちいい。

 

私は風景画が好きなのだけど、こういう自然風景の絵を見る時は、特にその絵の景色の中に入り込むような気持ちでみている。

 

昔よく山とか川遊びをしていたので、原風景としてそういうものを描きながら見てしまうのである。

 

静かな中に自然の音だけがあるような空間って、今は都会にはないからね。

 

 

風景画といっても、景色だけではなくて人も多少なりとも描かれているのは構図とかそういう観点なのだろうか。

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テオドール・ルソー「沼」

こちらは同時代のテオドール・ルソーという人の絵だが、真ん中あたりの赤い服の女性がとても印象的なアクセントになっている。

 

夕暮れ時だからかわからないが、全体には地味目な印象ながら、こうしたところは西洋絵画っぽいな、と勝手に思う色あいである。
 

 ちなみに、当時の絵画コンクール的なやつでは、この絵が称賛を浴びたらしい。

 

他の風景画と比べると、やはりこの赤がとても際立って目を引いていたものな。

 

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ウジェーヌ・ブーダン「ベルク、出港」

そこから様々な画家も戸外で制作するようになるわけだが、こちらは特に印象派的な絵の始祖と言われるウジェーヌ・ブーダンという人の絵だが、特に空の青なんかとても鮮やかで、全体的にも非常に明るい印象である。

 

同時に目まぐるしく変わる自然をとらえるためかタッチの荒い絵も出てくるような感じかな。

 

写真のような精巧さが西洋絵画表現の大きな特徴だったところから、大きな変化ではないだろうか。

 

表現以外にも制作姿勢だったりとかで影響を与えたと言われる人は他にもたくさんいて、よく名前を耳にするのが自ら船を持って、旅をしながら制作に当たったドービニーという人である。

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シャルル=フランソワ・ドービニー「森の中の小川」

パルビゾン派と呼ばれる一群があったのだけど、彼はその中心的な作家の一人で、先のコローやルソーもその一人である。

 

パルビゾンというのはフランスの地名なんだけど、その周辺に多くの画家が集まって、制作活動をしていたことで、その人たちをまとめてそう呼んだということらしい。

 

後の印象派と呼ばれる多くの画家とも交流があり、セザンヌ、モネ、ピサロドガルノワールなどにも影響を与えたそうだ。

 

以前もSOMPO美術館でドービニーの個展が開かれたので観に行って、その時に図録も買ったんだけど、全体に静かな風景画とても綺麗で今でもパラパラめくってみている。

 

 

この展覧会ではこのパルビゾン派、中でもコローの絵が多く展示されているんだけど、後半ではその印象派画家の絵も展示されている。

 

私は初めて見る作品ばかりだったので、それも新鮮でよかったですね。

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クロード・モネ「ベリールの岩礁

この絵は実物は1m四方より大きい絵なんだけど、これぞ印象派的技法と言わんばかりの作品で、近くで見るとモザイク画のようになんだかよくわからない感じだが、距離をおいてみるとそこに景色が浮かび上がってくる。

 

この画像だとある程度引きで見た時の感じだけど、実物で見ると岸壁の存在感が全然違う。

 

またルノワールの風景画もあるのだけど、「ノルマンディーの海景」という絵も非常に面白い。

 

砂浜を描いた絵なので、ラフに近い印象でもあり、近くで見ると正直なんだかよくわからない。

 

しかしこれを引きで見ると、「おお!」と思わず唸ってしまう。

 

いい画像がなかったので、こちらも是非見てみて欲しいところだ。

 

こうした有名画家の絵もさることながら、初めてみて目を奪われたのはこちらの絵だった。

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マクシム・モーフラ「日没の岩礁

この画家さん自体初めて知ったんだけど、マクシム・モーフラという人の絵なんだけど、何気ない感じのこの絵がなんか妙に印象に残ってしばらくみてしまった。

 

画像の解像度が低いので伝わらないと思うけど、印象派的な技法なので、一定の距離をおくと急に印象が変わる作品である。

 

本当はもう一つの作品の方がすごく好きだったんだけど、いい感じの画像がなかったのでこちらを。

 

知っている作家も知らない作家もあり、初めましてながら好きな絵もたくさんあって、全体にいい感じのボリューム感でとてもいい展示会でしたね。

 

 

カミーユ・コローと音楽と

色々の作家が出てきたけど、やはり今回の主人公、コローと合いそうな音楽は何かな、と考えてみたが、こちらなどどうだろうか。


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日本のロックの祖とも呼ばれるはっぴいえんど、その代表作(ていっても3枚しかアルバム出してないけど)である『風街ろまん』の1曲目”抱きしめたい”。

 

今の耳で聞けば素朴な音楽にも感じるが、演奏一つ一つがシンプルながら聴きどころも多く、また歌詞に合わせてタバコを吐くような音を入れたりと、細かなところも含めておしゃれ。

 

ついこの間松本隆さんのトリビュートアルバムがリリースされたり、シティポップの文脈で細野晴臣さん、大滝詠一さんも世界的にも再評価が進むなど、すでに50年位前にも関わらずいまだに話題に事欠かない。

 

いかにも懐古的な奴ら騒いでいるだけだろ、と思う人もいるかもしれないけど、彼らはただ音楽がいいのである。

 

私も色々音楽を聴く中で彼らの存在を知って聴くようになったけど、音楽から見えてくるイメージがなんだかすごく日本的な感じがあって、それこそ私の原風景に重なるのでえある。

 

言ってしまえば田舎っぽさ、その中でのちょっと気取った感じ、でもいやらしくなくてセンスがいい。

 

今現役のバンドやアーティストにも多大な影響を与えているし、作品として素晴らしい。

 

それはやっぱり原風景的な存在だから、懐かしいのに古いって感じがないのである。

 

素朴なタッチながら、後進への多大な影響、そのたたずまい的にも、結構マッチするかなと思ったが、いかがだろうか。

 

終わりに

コロナになって以降、配信だったりリモートだったり、デジタルを介したコミュニケーションなり接触が当たり前になっており、それはいい部分もある。

 

他方で、やっぱり生であるからこそ伝わることだったり、感じられることだったりというのはあるので、その経験はできるだけしておきたいですよね。

 

どうなるかわからない中、後悔ないような選択をしていきたいものである。