渡辺省亭 -欧米を魅了した花鳥画
すっかり桜も散って、殆どが葉桜となっている上野公園だが、緊急事態宣言解除を受けてか多くの人の出があった。
外国の人も観光なのかよく見かけたね。
かく言う私もウロウロしているわけだが。
そんな今日は芸大で開催されている渡辺省亭展へ。
コロナの影響で海外の美術館からは絵が借りられないので日本の絵画展が多く開催されており、先日まで開催されていた吉田博などこれまで知らなかった人の個展が多くなっていることは私にとってはいい機会である。
以前は西洋画、とくにやはりわかりやすい印象派の作品を好んで見ていたけど、最近は日本の絵画も好きでよく見ている。
渡辺省亭 -欧米を魅了した花鳥画
さて、そんなわけで 東京芸術大学へ。
【開催概要】
明治から大正にかけて活躍した渡辺省亭の全貌を明らかにするはじめての展覧会です。(略)
繊細で洒脱な花鳥画は、その後、万博への出品やロンドンでの個展などにより、海外で高い評価を得ます。一方、国内では、迎賓館赤坂離宮の七宝額原画を描くなど、その実力は認められながらも、明治30年代以降は次第に中央画壇から離れて市井の画家を貫いたため、展覧会で紹介されることが少なくなりました。
この展覧会は、近年再評価され、注目される省亭の海外からの里帰り作品を含め、これまで知られていなかった個人コレクションを中心に、全画業を紹介する待望の企画です。
【開催期間】
2021年3月27日〜5月23日
実は印象派の画家にも影響を与えており、あのドガには要望に応じて絵のプレゼントをしたこともあるそうだ。
また、画鬼と自らを称した河鍋暁斎が取り組んでいた絵の見本帳のようあものがあったらしいが、彼が途中でなくなってしまったのでその事業を引き継いだのが渡辺省亭であったそうだ。
それだけ画力が優れていたということである。
個人的みどころ
日本画は昔から景色や風俗を描くものも多く、西洋と比べれば宗教画も多くない。
というか、仏教画みたいなものはお寺に収蔵されていたりするので、見にいく展覧会ではあまり扱っていないだけだろうけど、ともあれ適度なゆるさやユーモアもあり、漫画大国ニッポンには昔からそんな素地があったのかもしれない、などとも思う。
この渡辺省亭という人は動物、植物、美人画など画題は多岐にわたるが、とにかく絵が抜群に上手い。
プロなんだから上手くて当たり前だろ、なんて思うだろうがそんなばかりではない。
こと写実性という点においては、それこそ速水御舟や、古くは伊藤若冲、円山応挙、葛飾北斎など、その画力自体が個性となっているくらいだと思う。
文化的な違いなんだろうけど、絵の具の種類や画材が違うせいか、西洋画とは違った味わいがあって、静物画については私は日本の画家の描くものの方が好きである。
また、ただ写実的、いわば写真みたいだからすごい訳じゃなくて、やはり絵画としての表現がそこにはあり、濃淡やスポット的な表現、あるいは抜き差しのバランスや構図など様々な要素を加味して再構築されており、そこにも画家の力量や個性が現れる訳である。
掛け軸などを見ればわかるが、日本の絵は背景などを描かず、対象のみをポンとおくようなものが多い。
で、この人の絵は色の使い方もとても良くて、背景などは水墨画のように白黒の濃淡で描かれ、ポイントになるもの、あの中の主役にだけ淡い色彩を載せるものがとても印象的である。
ファッションでも差し色を入れるのはオシャレのテクニックな訳だが、そんな差し色の効果も端的にわかりやすく提示してくれているだろう。
そして動物画においては、本当に生き生きと描くのである。
今にも動き出しそうなんていうのは動物がなんかの誉め言葉の定型句の一つだが、むしろ動いているまさにその瞬間のようなのだ。
あんまりそう感じたことが個人的にはなかったので、私にとってはなかなかエポックメイキングな体験でもあった。
渡辺省亭と音楽
そんな渡辺省亭展に紐付けで見たい音楽は、ハードコアバンドとして世界的にも評価があり、日本ではZAZEN BOYSの大きな参照点と言われており、またスーパーキテレツインストバンド、Battlesにも大きな影響を与えている54-71である。
ギター、ベース、ドラム、ボーカルというシンプルな編成で、音数も多くなくスピードの速い楽曲でもない。
全編英語詞で、ラップ的な歌い方をしていて、曲調もいわば人力ヒップホップ的な感じもある。
どんと腰の座った重低音に乾いたギターがかっこいい。
音楽自体は極めてシンプルながら、やたらドスが効いていて迫力満点。
侘び寂びも感じさ、日本的な風味も満載である。
好みは分かれるだろうが、腰にくるかっこいい音楽をやっている。
まとめ
何かと海外コンプレックスの強い日本人、しかし世界から称賛 される日本がここにあるわけだ。
なんてこと言うまでもなく、見ているとシンプルに驚くし、感動する。
余白には間があって、時間が存在しているような絵画表現は、つい見入ってしまう。
画像が出てこなくて掲載できなかったが、金魚の絵もしなやかで透明感もあって、本当にすごい。
開催期間はまだしばらくあるので、是非見に行ってみてほしいところである。