美術館巡りと音楽と

主に東京近辺の美術館、企画展巡りの徒然を。できればそこに添える音楽を。

刀剣 もののふの心

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都内で日本美術を専門的に扱っている美術館は何箇所かはあるのだけど、よく私が足を運んでいるのが恵比寿にある山種美術館である。

 

山崎種二さんの作ったところで、当時の日本画家とも交流があったそうなので、自身に送られた作品も含めて多く収蔵している。

 

また重要文化財も多くコレクションしており、速水御舟の「炎舞」も持っており、定期的にお披露目されている。

 

今まさに開催中の企画展が速水御舟なので、来週辺りに行こうかと思っている。

 

で、そのほかで最近よく足を運ぶのがサントリー美術館だ。

 

六本木のミッドタウンの中にあるので、行くたびにセレブな人やセレブに憧れる人とすれ違いながら向かうわけだが、存外煩くないし、広くて綺麗でゆったりみられるのでいい美術館である。

 

カフェも併設しているのでおされな人たちもよくいるが、ともあれやっぱり美術館はゆったり感が大事だ。

 

そんなサントリー美術館では現在刀を中心にした展示を行なっている。

 

忙しくて書きそびれてしまったが、この一つ前に開催されていた「ざわつく日本美術展」でも数点展示されており、私はそれまでちゃんと刀って見たことがなかったんだけど、なんたら美しいのかと感動してしまった。

 

昔からゲームで刀を武器にするキャラクタが好きだし、やっぱり憧れてしまう武器だ。

 

銃よりも色気もあるしな。

 

まあ、昔の戦場にあって色気もクソもないわけだが、やはり日本刀というのはその芸術性もあっていいですよね。

 

なので、勇んで出かけてきました。

 

刀剣 もののふの心

今回の企画展では刀を中心としつつも戦国の風景を描いた絵や、刀身だけでなく鞘や鍔といった装飾品なども展示しているので、タイトル通り戦国時代のあれこれも見られるのが面白いところだ。

【開催概要】

我が国では、刀工の優れた工芸技術と武家の美意識を背景として、古代、中世以降、様々な名刀が生み出されてきました。近年、日本美術に対する関心が高まる中で、とくに刀剣は注目を集める分野と言えましょう。
(中略)当館が開催してきた展覧会においても、歴史に名を連ねる武将に関連する美術や史料を多数展示してきましたが、刀剣や甲冑武具こそは、言うまでもなく武家の人生や暮らしにおいて大切にされた根幹を成すものであったと言えます。
この展覧会では、京都や近畿を中心に、由緒正しい神社や崇敬を集めてきた寺院に奉納され、伝来した貴重な刀剣を一堂に集め展示します。それぞれの刀剣には、所持した武将とその英雄譚、鍛え上げた刀工、守り伝えた人々などについて、様々な伝承が大切に受け継がれてきました。(中略)

今回の展示では、これらの刀剣にまつわる伝説についても、絵画や史料も加えてその意義を深く掘り下げます。さらに、臨場感あふれる主要な合戦絵巻や屛風によって戦に赴く武家のいでたちをご覧いただくとともに、調馬や武術の鍛錬など、日々の暮らしぶりなどにも着目し、武家風俗を描く絵画や史料を展示します。

【開催期間】    
2021年9月15日(水)~10月31日(日)

 

出典:

サントリー美術館 開館60周年記念展 刀剣 もののふの心 サントリー美術館

最初に書いておくが、刀は画像で見ても正直わからない。

 

本物を見てこそなので、絵画同様現地で見た方が圧倒的に面白い。

 

また戦国時代の武将なんかも登場するので、是非BGMにはコテンラジオの武士の回を合わせて見てみて欲しい。


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個人的見所

実際の戦いってのはどんなだったんだろうね、というと、もはや文献なり当時の絵画なりでしか知る由もないが、なんとなくイメージする合戦だと、鎧を纏った歩兵が刀を持ってワーーーっと走っているみたいなイメージだろうか。

 

あるいは武蔵対小次郎よろしく1対1の果たし合いなれば剣道のような感じかもしれない。

 

といっても、漫画で描かれるほど鮮やかでもなければ潔くもないのが戦場というものらしく、実際はやっぱり血生臭くておどろおどろしいものだったろう。

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谷文晁「石山寺縁起絵巻」

こちらは戦場というよりは討ち入りというやつか。

 

石山寺に鎧を着込み抜刀した侍がドカドカと入りこみ、寺は炎上している。

 

その炎の様もいかにもおどろおどろしく、しかもイメージする侍的な佇まいよりはよほど荒々しく、野伏といっても疑わない描かれ方だ。

 

綺麗事なんて言えないよね。

 

そんな時代の代表的な武器である刀、当時は武器としてだけではなく、偉い人への献上品としても扱われていたというので、当時からやはり芸術品としての価値もあったのは間違い無いよね。

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重要文化財 太刀 銘 □忠(名物膝丸・薄緑)

こちらは鎌倉時代に作られたもので、重要文化財にも指定されているらしい。

 

13世期なので、今から800年くらい前になるよね。

 

ちなみに1192年が鎌倉幕府の起こりと私が子供の頃は習ったが、今は確か1187年とかと教えられるらしいですね。

 

嶺の辺りに溝があり、形態的にもかっこいい。

 

当然手入れをされているので、本当の意味で当時のままというわけでは無いと思うが、これだけの時代を経てもなおキラリと光るこの刀身は美しい。

 

てか、おそらくこの刀も何人もの人をぶった切ってきたのだろうから、それを思うとなんとも不思議な気持ちにもなる。

 

もっとも、時代劇のように悪漢をバッサバッサと一本の刀で切り倒すことは、現実的には難しいと言われている。

 

理由は、人を切れば当然血糊や脂がつくので、早々に切れ味は落ちるのだとか。

 

だから、あんなに鮮やかにスパスパとやっていくよりは、やっぱりぶった切る的な使い方だったのではないだろうか。

 

桃太郎侍だったか、懐から和紙を出して頭身を拭う様は、史実的なものなのだろうな。

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義元左文字

こちらはかの今川義元が持っていた刀だが、それを織田信長が撃ち倒した際に戦利品として奪った刀だとか。

 

戦国無双では麻呂なキャラでコミカルで浮世離れした設定になっている今川義元だが、海道一の弓取と呼ばれるくらいめちゃくちゃ強い武将であったというのは有名な話だ。

 

そんな義元を信長が破ったのが桶狭間の戦いであるわけだが、最近では研究が進みそのいくさの様もより詳細がわかってきており、どうやらこちらも私が子供の頃に習ったものとは違ったのでは無いか、と言われているとか。

 

映像が残っているわけでも無いので、こうして歴史が変わっていくのも面白いものだ。

 

と、2つ画像を載せた時点で既にあんまり面白く無いので、やっぱり現地で見て欲しい。

 

ジョジョの奇妙な冒険においても、刀に宿ったスタンドが登場しており、その刀の美しさに魅入られたものが乗っ取られて本体になるという呪いのようなスタンドがあるのだが、その気持ちがちょっとわかる思いがする。

 

 

この企画展では先にも書いたとおり、刀だけでなく絵画や甲冑なども展示されており、中には非常に親しみやすいものもある。

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「家康・信玄・謙信家臣図」

こちらは3幅セットのもので、徳川家康武田信玄上杉謙信の主だった家臣を描いた作品である。

作者は不明なようだが、名前もちゃんと書いているのでそれを眺めるのも面白い。

 

また甲冑も、兜だけでなくそれぞれにデザインや防具の作り方も違っておりそれも面白く、また甲冑を作るお店の様を描いた絵画もあり、当時の風俗も見えてくるのが興味深いところだ。

 

戦国といえど日々の暮らしはあるわけで、馬小屋で遊びに興じるオフの武士の姿なども、どうかコミカルな印象で面白い。

 

絵画と実物の展示のバランスもよく、刀などを納めていた箱なども出てくるので、なかなかマニアックでもあるので武具とかにワクワクしてしまう人はぜひ行ってみると面白いと思います。

 

刀と音楽

さて、そんな刀についての音楽としては、いくつか迷ったが素直にこの曲だ。


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2曲続いている映像だが、1曲目の方。

 

日本の誇るロックンロールバンド8otto(オットー)のその名も”KATANA”。

 

このバンド自体、ギター、ベース、ドラムというシンプル編成で、Voはドラムの人だ。

 

Strokesが引き合いに出されることがデビュー当時から多かったが、シンプルでソリッドな音楽はまさに日本刀のような切れ味だ。

 

一時バンド活動を休止しており、それぞれが別の仕事をやっていた時期もあったのだけど、数年前にアルバムとともにカムバック、今は定期的に音楽活動もしながら、なんだか吹っ切れた印象もあっていい感じだ。

 

関西のバンドなので、時勢的になかなかツアーも出られないので東京でのライブがないのが残念だが、ともあれまたきてくれる日を楽しみにしている。

 

ちなみに、Dr/Voの人は天然でアフロになるくらいの人だが、それを整髪剤で抑えて営業をやっていたり、ベースの人は飲食店、ギターのうち一人は僧侶になったりと、みんなそれぞれに暮らしをしながらの音楽をやっている。

 

まとめ

ちゃんと本物の刀を見たのはほぼ初めてだったのだけど、ついきらりとひかる刀身に目を奪われつつ、ただまだまだ見方をわかっているかと言えばそうでもないというのが私の現状だ。

 

しかし、こういうものは何度か見たり、その中で調べたりする中で見えてくるものや見え方も変わってくるので、今後また勉強してみようをと思っている。

 

絵画のような華やかさはないが、侘び寂びと呼ばれるものを感じる静かな輝きは、やっぱり魅力的だなと思わせる企画展でしたね。